CAMソフトのメーカーさんのサイトで、ソフトの紹介されているのを見ると
案外当たり障りの無い紹介が多いんですよね。こちらはPowerMill(以下PMill)です。
PowerMill の機能 | 5 軸加工 CAMソフト | オートデスク
まぁ当然そうなると思います。他のソフトと比べる事も出来ないですしね。
AUJ2019でちょっと聞かれた際にあまり良いお答えが出来なかった為、
こちらでご紹介。あくまで幾つかのCAMソフトを経験したユーザー視線で
"これ良いと思うよ" と言う部分です。
業務用のデータを見せる訳にはいかない為、GrabCADからデータをお借りしました。
Free CAD Designs, Files & 3D Models | The GrabCAD Community Library
(このデータすごい・・・)
抜き勾配もしっかり付いていた為、そのままではなくチョコチョコっと
変更してみました。
加工する者として気になるのは、「加工出来んのか?」の1点です。
そのための作業を進めましょう。大まかな深さを測ると80mm強です。
・・・PMillの測定は「点-点」となるため、Fusion360より弱いです。
この辺は諦めており、素直にCADで測ってます。
続いて「抜き勾配もしっかり付いていた為」と記載したのですが、良く調べると
赤い表示部分が指定した角度以下の部分です。(この時は1°)
幾つかの部分で抜き勾配の付け忘れと、残念なことに逆向きに勾配を付けて
しまっている部分(アンダーカット)がありました。
「ここ何度?」は測るのに苦労するのですが、指定角度以下(垂直面を含む)の部分の
表示は瞬時に行います。
これ、経験した他のCAMソフトでは見たこと無いですが、CADCAMだとあるだろうと
思います。
さぁ続いて仕上げ工具を選定する上で、最小Rとまでは行かないものの
全体的な小径Rを知りたいところです。
勾配同様、「ここ何R?」は難しいのですが、指定したRサイズ以下を表示
させるのは瞬時に行えます。こちらはR5以下を赤く表示させてます。
こちらはR3以下を表示させてます。
「んじゃ、R3で仕上げようかな」って感じになります。
これも他のCAMソフトでは見たこと無い機能です。
「ここまでの作業、十分CADで出来るよね?」と思われた方、正解です。
でも、ここからがCAMソフトならでは真骨頂。
あくまで目的は「加工出来んのか?」です。
R3で「やっつける」方向に決めたので、R3ボールエンドミルでホルダー径φ50
で突き出し量60mmとしてみます。
(当方金属切削を行わない為、現実的ではない数値と言う事は十分承知して
おります。)
通常のCAMソフトでは一度ツールパスを計算し、
「加工に使用する為の工具がどれぐらいの長さが必要か?」
を求めることになると思います。(PowerMillもそれは出来ます)
但し、ツールパスの計算自体時間のかかる処理で、手っ取り早く行うためには
トレランスを大きくして、加工ピッチを大きくするぐらいになるだろうと
思います。
ここで利用するのがバウンダリー(切削領域)機能です。
通常、切削領域と言えば平面的(2D)なものになるはずです。Fusion360でも
このような感じです。
Fusion360CAM 加工領域の選択 - C#ATIA
PMillの場合は、バウンダリーは3Dで有り、演算で求める事が可能です。
過去に記載したこちらもその一部です。
バウンダリ機能1 - C#ATIA
今回はこちらの「干渉なし」を利用してみます。
名称がショボい? そんな方は・・・英語モードで利用しましょう。
ホルダー部分だけ(0.5)少しクリアランスを確保し、トレランスを甘めの0.1
としておき実行すると
慣れないとわかりにくいのですが、白く囲まれた領域はこの工具では加工出来ない
部分です。ツールパスの計算に比べかなり短時間で処理します。
結構、残ってしまいますね。
そこで、ホルダー形状を変更し再計算させると
おぉ結構削れるじゃない って事になります、短時間で。
処理を速めるため、トレランスを甘くしているので実際にこのバウンダリを
利用するわけには行かないのですが、「当たりを付ける」と言いますか、
「戦略を練る」と言いますか、方向性を比較的短時間で決めやすいです。
こちらのはその動画です。
(メーカーさんのデモで有りがちなのですが、トレランスを甘くしています。
ご注意を。)
この機能は恐らく他のCAMでは無い様な気がします。ひょっとしたら
「machiningSTRATEGIST」(こちらも3Dのバウンダリー)には有るかも
しれませんが
MACHINING STRATEGIST | Software
「Boundaries」の中にそれっぽいものは無さそうです。
こう言う機能、なかなか紹介してくれないんですよねぇ。
結果的にR3では「やっつける」事が出来そうに無い事が判明し、
「じゃあ、この辺届かないから放電加工にしようか」
と言う事になり、早めに判断出来ます。
そうなれば、我々も納期の余裕が持て助かります。
お仕事お待ちしております・・・。