C#ATIA

↑タイトル詐欺 主にFusion360API 偶にCATIA V5 VBA(絶賛ネタ切れ中)

PowerMillのPowerの部分1

CAMソフトのメーカーさんのサイトで、ソフトの紹介されているのを見ると
案外当たり障りの無い紹介が多いんですよね。こちらはPowerMill(以下PMill)です。
PowerMill の機能 | 5 軸加工 CAMソフト | オートデスク
まぁ当然そうなると思います。他のソフトと比べる事も出来ないですしね。


AUJ2019でちょっと聞かれた際にあまり良いお答えが出来なかった為、
こちらでご紹介。あくまで幾つかのCAMソフトを経験したユーザー視線で
"これ良いと思うよ" と言う部分です。


業務用のデータを見せる訳にはいかない為、GrabCADからデータをお借りしました。
Free CAD Designs, Files & 3D Models | The GrabCAD Community Library
(このデータすごい・・・)
抜き勾配もしっかり付いていた為、そのままではなくチョコチョコっと
変更してみました。
f:id:kandennti:20191025173719p:plain

加工する者として気になるのは、「加工出来んのか?」の1点です。
そのための作業を進めましょう。大まかな深さを測ると80mm強です。
f:id:kandennti:20191025173906p:plain
・・・PMillの測定は「点-点」となるため、Fusion360より弱いです。
この辺は諦めており、素直にCADで測ってます。

続いて「抜き勾配もしっかり付いていた為」と記載したのですが、良く調べると
f:id:kandennti:20191025173917p:plain
赤い表示部分が指定した角度以下の部分です。(この時は1°)
幾つかの部分で抜き勾配の付け忘れと、残念なことに逆向きに勾配を付けて
しまっている部分(アンダーカット)がありました。
「ここ何度?」は測るのに苦労するのですが、指定角度以下(垂直面を含む)の部分の
表示は瞬時に行います。
これ、経験した他のCAMソフトでは見たこと無いですが、CADCAMだとあるだろうと
思います。

さぁ続いて仕上げ工具を選定する上で、最小Rとまでは行かないものの
全体的な小径Rを知りたいところです。
勾配同様、「ここ何R?」は難しいのですが、指定したRサイズ以下を表示
させるのは瞬時に行えます。こちらはR5以下を赤く表示させてます。
f:id:kandennti:20191025173931p:plain
こちらはR3以下を表示させてます。
f:id:kandennti:20191025173941p:plain
「んじゃ、R3で仕上げようかな」って感じになります。
これも他のCAMソフトでは見たこと無い機能です。


「ここまでの作業、十分CADで出来るよね?」と思われた方、正解です。
でも、ここからがCAMソフトならでは真骨頂。
あくまで目的は「加工出来んのか?」です。

R3で「やっつける」方向に決めたので、R3ボールエンドミルでホルダー径φ50
で突き出し量60mmとしてみます。
(当方金属切削を行わない為、現実的ではない数値と言う事は十分承知して
おります。)
f:id:kandennti:20191025174007p:plain
通常のCAMソフトでは一度ツールパスを計算し、
「加工に使用する為の工具がどれぐらいの長さが必要か?」
を求めることになると思います。(PowerMillもそれは出来ます)
但し、ツールパスの計算自体時間のかかる処理で、手っ取り早く行うためには
トレランスを大きくして、加工ピッチを大きくするぐらいになるだろうと
思います。

ここで利用するのがバウンダリー(切削領域)機能です。
通常、切削領域と言えば平面的(2D)なものになるはずです。Fusion360でも
このような感じです。
Fusion360CAM 加工領域の選択 - C#ATIA

PMillの場合は、バウンダリーは3Dで有り、演算で求める事が可能です。
過去に記載したこちらもその一部です。
バウンダリ機能1 - C#ATIA

今回はこちらの「干渉なし」を利用してみます。
f:id:kandennti:20191025174100p:plain
名称がショボい? そんな方は・・・英語モードで利用しましょう。

ホルダー部分だけ(0.5)少しクリアランスを確保し、トレランスを甘めの0.1
としておき実行すると
f:id:kandennti:20191025174111p:plain
慣れないとわかりにくいのですが、白く囲まれた領域はこの工具では加工出来ない
部分です。ツールパスの計算に比べかなり短時間で処理します。
結構、残ってしまいますね。

そこで、ホルダー形状を変更し再計算させると
f:id:kandennti:20191025174129p:plain
おぉ結構削れるじゃない って事になります、短時間で。
処理を速めるため、トレランスを甘くしているので実際にこのバウンダリ
利用するわけには行かないのですが、「当たりを付ける」と言いますか、
「戦略を練る」と言いますか、方向性を比較的短時間で決めやすいです。

こちらのはその動画です。

(メーカーさんのデモで有りがちなのですが、トレランスを甘くしています。
ご注意を。)


この機能は恐らく他のCAMでは無い様な気がします。ひょっとしたら
「machiningSTRATEGIST」(こちらも3Dのバウンダリー)には有るかも
しれませんが
MACHINING STRATEGIST | Software
「Boundaries」の中にそれっぽいものは無さそうです。

こう言う機能、なかなか紹介してくれないんですよねぇ。


結果的にR3では「やっつける」事が出来そうに無い事が判明し、
「じゃあ、この辺届かないから放電加工にしようか」
と言う事になり、早めに判断出来ます。
そうなれば、我々も納期の余裕が持て助かります。
お仕事お待ちしております・・・。